野原の家

 

ご夫婦は自身が育ったこの農村地域で、小さくても家族同士がつながりを感じることができ、敷地内の野原や、隣地の林、お寺の大きな木々たちと一体となった生活を望まれた。

計画地は農地法により建築面積は敷地に対して22%以上であることが求められた。 不足する建築面積分として東屋2棟をセルフビルドで築造した。

それらを敷地に散りばめることで、母屋と野原の間に生活の領域をつくった。

 

母屋は小屋型総2階とし周囲の農具小屋や家屋に馴染む建ち方とした。

玄関はこの地方にいまも点在する田舎屋敷の長屋門をくぐり、領域に入っていく形式に重ねた。

前面道路に面する玄関を入ると、迎える垂壁の向こうに野原が見える。

玄関と生活領域を切り替えるこの垂壁を曲面、くぐる高さにすることで、トンネルのような抜け感と包まれるような抱擁感、鳥居のような領域の切替わり感と空間の連続感、といった体感の重なりをつくり、意識を野原へ向けた。

 

内部は各床面に高低のある立体的な構成とし、家族がつながり、生活の中で隣の大木の様々な表情を見ることができるプランとした。

 

開口部はアルミサッシを活用した。通常は壁と合体しているサッシを柱面からアウトセットすることで、内外の境界が分解され、生活と野原が近くなる。

また、小さな床面積の中にあえて柱を落とし、柱による領域をつくった。

母屋の柱、サッシの方立、東屋の柱、敷地内の木立、敷地外の木立の連続。

自分が動くと周囲の柱や木立も複合的に連動する。

自分を起点にして近い柱は小さく、遠いところにあるものは大きく動く。

このパララックス効果という知覚により、豊かな奥行と内外の連続性が生まれ、生活が野原に広がっていくことを狙った。

 

私は、活動している地域風土の空気感をつくっている各用途の小屋たちに魅力を感じ、現時点で千数百件アーカイブしている。

小屋の素直なたち方、環境、用途に応じた自然な構造形式、即物的なモノの使い方に強く魅かれる。

それはまさにモダニズムの合理性とつながっている。

 

コルビュジエが

柱・壁(建築秩序)とカーブ × 色彩・造形(自身性)

を掛け算して生命力に富んだ建築をつくっていったように、

 

小屋(この風土の時間に磨かれた合理のタイポロジー)× 人々の生活(アノニマスな知性) を掛け算し、建築が知覚の基準としてありながら、人間が自身も自然の一部だと本能的に感じることができる場所をつくっていきたい。

 

ミノムシが周囲にある素材で蓑をつくる感覚で、風土と環境、時代性とつながっていく。 ある時は木の皮で、ある時といえば毛糸でもこしらえるように。

用途 住居

構造 木造2階建
Completion 2018.1
三重県亀山市
Photo:Hiroshi Tanigawa
    + 新建築社