2023.4.30

旅日記最終日

とうとう4月も最後の日になってきましたが、ようやく3月の旅日記の締めくくり.最終日.







旅の最終日は中里さんとニュルンベルクの街を歩く.

街を歩いていると、なんだか違和感.

歩いていると、だんだんとその理由が分かってきた.

街が新しいのだ.

歴史が引き継いできた街並みを模倣した、時代村のセットのような街並み.

肌が本能的に時間の薄さを感じて、つくられた古い時間の中にいるような醒めた感じを受けてしまったのだ.






ミューラーの生家と、おもちゃ博物館をまわった後、

午後からは展示の打合せをする中里さんと別れ、一人、ニュルンベルク城にのぼる.








階段の先、街を見晴らすべく、ぐるぐると塔をのぼる.






赤い屋根の連なり.

円形の塔の展望台の通路には、それぞれの方位に2枚の写真が展示されていました.











ここでようやく気づく.

先の大戦で壊滅的に破壊された街.

今の街.

執念ともいえる信念で、街並みから街区まで復元されているのだ.

僕が感じた時間の薄さは、人々が、自分たちの街をもとの街へと復旧した証であることに気付き、申し訳なさと恥ずかしさと.

モノの経年変化がもたらす味わいといった表面的な現象とは別次元の、人々が真剣に文化を受け継ぎ実践して再建された街並み.

日本を自虐的に例えるつもりはないけれど、個人的に我が国の戦後の復興は、彼の国による資本主義の実験場であったと思えてならない.

これまでの時間の継承、文化の復興といった選択肢よりも、有無を言わさず資本主義の加速、労働力という新しい植民地の場となった日本.豊かさといったことを考えた時、これが本当に人間の豊かさだろうか.

このことは、風景に太陽光パネルが増殖していく現代この国の在り方と同じだと思っている.

この街並みを見れたことは大きな学びになった.





夜、中里さんと一献して、翌朝一緒に朝食を摂り、ぼくだけ帰国.






城郭のまち、ニュルンベルクを出る.振り向くとまち.

この先は都市.











地下鉄に乗って、








飛行機を乗り継いで









山を越えて、





飛行機の隣だったポルトガルから来たおばさんと仲良くなって、




帰ってきました.




久しぶりの長期の一人旅.


とてもいい経験になりました.


いい建築をつくれるように、日々、感じたこと、経験を発酵させていきたい.


”建築設計は人の概念と体験、経験を現実化する技だと思う.

設計図を描く人の世界のとらえ方、把握の仕方が、建築そのものになる.

それは形もそう.イメージもそう.使いやすさもそうだし、風の流れ、自然現象の察知の仕方もそう.

物事をどこまでの解像度でとらえられているか.気付けていけるか.

それがカタチになっていく.想像力も、慎重さも併せ持つことが大切だし、ひとの心と自分の心を重ねていくことも大切.

過去の経験をどれだけ真剣に受け止めるかで、この先へのつながり方、経験の意味合いが大きく異なる.想像は未来につながっていく.

心の感覚や身体感覚がカタチになって、人と共有できること.されること.これが設計の不思議さであり、責任であり、面白さ、苦しさだなぁ、と独立して10年目にようやく思う.”


未来の自分は今の自分がつくる. それは、今の自分は過去の自分によってつくられたともいえる.

特に建築設計は今考えていることと、実現するタイミングに大きなタイムラグがある.

いま、しっかり向き合って、未来の建築や自分、託してくださった方によくやった、と思ってもらえるように.いまをしっかりやっていかないと.


この先に出会う建築が楽しみになるように.



ようやく次回からは通常のBlogを綴っていきます.








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