2022.12.28
伊藤ていじを追いかけて
軸組と造作。
建築史家、伊藤ていじが著書、「民家」(平凡社、1965年、日本の美術 21巻)で提唱した民家建築のシステム。
軸組とは、構造体となる木組み(建物の骨格となる柱や梁、小屋組など)のこと。
対して、造作とは、建物の構造とは関係ない、床、壁、天井、間仕切りとなる襖や障子のことを指す。
この軸組と造作というシステムにより、造作部分がその時代に見合った改変ができたからこそ、民家建築が長い年月、生き残ってきた理由なのだとも述べている。
学生時代にこの本に出合ってから、いつか設計に活かしたい一つのテーマとして、いつも頭の片隅に置いていたことである。
本年は、幸いなことに、「軸組と造作」を反映できた、人生の第一弾となる住宅改築を担当させていただけたのだと個人的には考えている。
志摩市のY様・T様邸。
解体前と、解体後。
日中に照明を付けることもあったダイニングキッチンと、4部屋に区切られた個室、そして水回り。
・毎日、家族がそろって食事をするので、その機能を充実させたいこと。
・家族が各々活動していても、家の中では、なんとなく気配が感じられる雰囲気となること。
この2つがメインの要望でした。
ワンフロアの平面形に3つの土壁のブース(ベッドのある寝床)を設けたことで、上のご要望を満たしたご提案ができたと考えているのですが…
個人的には、柱と梁(=軸組)をなるべく既存のまま残し、どれだけ造作工事で空間を変化させられるかを狙ったつもりでもいます。
お施主様や職人さん方と、たくさんやり取りをさせていただきながら、本当に良い空間を実現できたこと、たいへん嬉しく思っております。
(設計のお仕事をさせていただく中で、一つの分岐点となったお家だとも考えているんです)
現在工事が進行中のO様邸。
築約90年の民家建築。
解体前は、食違い四間取りの平面形。
建築当初、土間空間だったところは床が造られダイニングキッチンとして使用されていた。
このお家も、なるべく既存の軸組を残しつつ、
造作工事にて、お施主様の理想とされる空間をどのように実現させられるかを、
設計テーマの一つにさせていただいております。
設計のミソは、リビングとダイニング。
もともと6畳の和室で、柱と垂れ壁と長押(襖や障子が取り付く太い梁)で囲まれた部屋から、
土間空間側に床を大きく増築したことにより、それらの領域のズレがどう空間を良くするのか…
2023年初夏完成予定。楽しみです。
(ちなみに…実は実家改築の計画もあり、軸組と造作という設計テーマは、個人的にはまだまだ続きそうです…)
それではみなさま、良いお年を。
来年もどうぞ、弊社をよろしくお願いいたします。
タマコもありがとう!また来年もよろしくね!
スタッフ 阿部