2022.12.21
広い敷地から考えてみる
和歌山県田辺市中辺路町、熊野古道なかへち美術館。
世界的建築家、SANAAが最初に設計したとされる美術館。
まずは、平面形を見てみよう。
(出典:熊野古道なかへち美術館のHPより
https://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan/info.html)
中央の真四角の箱。
この箱に、入口、事務室、保管庫、トイレ、機械室の各棟バラバラのボリュームが磁石のように吸い付けられているようだ。
展示室は真四角の箱の内部へ入れ子状に置かれていて、外敵から大切に守られているのが読み取れる。
胴体(=中央の真四角の箱)と核となる心臓(=展示空間)に、手足や尻尾(=入口、事務室、保管庫、トイレ、機械室)が取り付いていて、ある意味生き物のようにも思えたりする。
こうした平面形は要求される床面積に対し、敷地が広い場合の設計にも有効だったりする。
では、空間を見てみよう。
美術館入口を外から。
ガラスで覆われた、水平に広がる翼が、来館者を迎え入れてくれるように見える。
入口を入ると、四角の箱と入れ子の展示室との隙間が、拝観動線となり、建物内をぐるっと一周できる。
その隙間を縫って交流スペースへ抜けると、そこは日置川を眺められる、風景と溶け込む空間となる。
平面形の曲線がそれを助長させていて、民家建築でいう縁側のような位置付けだろうと解釈する。
拝観動線の隙間の壁は、乳白色のアクリル素材で、周囲の環境(=木々の風景)が写り込んでいる。
そして、裏方。
バラバラのボリュームとボリュームの間が駐車場として成立する。
一見、バラバラに思える平面形…
でも、実際は各々の領域をつくるために必要なかたちなのである。
現在、工事が進行中の多気町のI様邸。
「熊野古道なかへち美術館」と同様に広い敷地に建つ住宅だ。
このお家は、1階が東西南北に広がる十字形。
十字が交差する中央部の直上に、真四角の2階が載るという平面形である。
北、西には茶畑が、東には森が、南側には太陽光パネルの発電施設が。
十字に伸びた翼の間と、それぞれの方角に見える個性。
地鎮祭、基礎工事と進むにつれて、見えてくる領域。
地鎮祭
基礎工事
そして、先週末の上棟。
紙面で見ていた設計図から、実物が施工されていく過程…
このあと、どのような姿を見せてくれるのでしょうか…
Iさん、ご上棟おめでとうございます!!
今年度末、竣工予定です。
スタッフ 阿部