2023.1.23
日本の建築空間 その2
福島県喜多方市、新宮熊野神社 長床。
柱が林立する拝殿空間は、規則正しく整えられた架構の美しさに魅了される。
「軸組と造作」を目指す人間にとっては、まさにお手本のような建築である。
春夏秋冬。
この言葉に最もふさわしいとも思える建築。
春。
初めて訪れたとき、桜吹雪が舞う。
その美しい表情を見せてくれた長床に、歓迎されているような気持ちになった。
夏。
青々とした深緑が取り囲む。
写真だけでは分からない、葉擦れや虫の音が、心地よく聞こえてきた。
秋。
ご神木のイチョウ。
軒下から、その全貌が見えないぐらいの大きさに圧倒され、本当にそこに神様が宿っているように思える。
冬。
お正月。
雪景色の中、更に重々しくなった大きな屋根が私たちの新年を迎え入れてくれる。
「建築を見に行く」という行為は、そこに建っている、「ある一瞬を切り取って眺める行為」とも思ったりする。
だから、昼夜や季節、あるいは私たちの心情によっても、違った表情に見えるのではないか、とも思う。
良い建築は、どんな時でも、何度訪れても、新しい気付きをくださる、言わば教育者のようなものだ。
「長床」はそういう建築。
ああ、春が待ち遠しい。
スタッフ 阿部