2012.6.3

男と女の家

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私事、自分へのケジメ、仕事等で色々忙しい毎日(人生経験まだまだですが32年生きてきて、今いちばんいそがしい・・・)
ですが、読みかけて、これは今どうしても読んでおかなくてはという本に出会ってしまったので、読み切りました。

住宅設計 伝説の名手 故 宮脇壇 さんの 『男と女の家』

氏はもう亡くなりましたが、60年代から時代を超越した斬新な住宅を設計してこられました。著書もたくさんあり、僕が初めて読んだ建築家の本もこの方の本でした。

けっして、デザインや斬新さだけではなく、人間と生活を鋭く読み、(生前、弟子の方達に『格好良ければ全てよし』と語っていた事もあったそうですが。。)その家族に合わせた器を設計する作品群は今見ても輝いています。

この著書でとくに感激したところを抜粋させて頂きます。

『日本では、社会的になかなか触れられない話題に、性の話、死の話、排泄とか尿の話があります。これらはいわゆる下ネタとして、昼間はほとんどしてはいけない事になっております。
ところが、この問題にきちんと対応しないと建物のちゃんとした設計などできないのです。例えば、小便器の前に小垂石というものがあります。汚い話ですが、だいたい四五歳頃をすぎると男のペニスの収縮筋はゆるみ始めてきて、排泄したあとに尿道にオシッコが残ります。それが用便後たらたらと太股に垂れているというのは、どこの本にも書いていない。そのために、どうしても不特定多数が使う便所では、便器の前に小便が垂れる。だから、それに対応して公衆便所とかビルの便所の小便器の下には小垂石というものを敷く。きれいに使えば大丈夫という方もたくさんいますが、必ず垂れるのです。便器の床はタイルが多いのですが、タイルの床には必ず目地があり、そこに小便がしみ込む。それ以外の目地のモルタルにしみ込んだ小便も発酵してかすかに臭う、それが公衆便所などの独特の臭いです。そういうものをなくすために目地のない大きめの石を敷きます。それが小垂石です―――――――。』

感激しました。

昔、安藤忠雄さんが『自分が今、どういう時代に立っているかを考える事が大切』
とおっしゃっていた事が記憶にあり、果たして、今はどういう時代かと考えたときに、
エネルギーの転換期ともいえる時期に立っていることは間違いない。
でもそれが住宅の本題か、とずっとモヤモヤしていた事が晴れました。

たしかに、これからの時代、エネルギー問題を考えずに建築をしていくことは難しい。
事実、2020年には住宅にも一定の省エネ基準をクリアしたものではないと建築確認が不可になるとの法律ももう、決定しています。打ちっぱなしの住宅はおそらくもう建てれない。
でも、国の住に対する基準、あたかも住にとっての最重要事項が省エネであるような進め方は理解したくない。
多少暑くても、あなぐらのような住処に住まいたいという人だっているはずだ。

電力消費が馬鹿にならんと国が言うのならば、各世帯に供給する電力量を一定の基準で設ければよい。それでも打ちっぱなしに住みたいというヒトは住むと思うし、それくらいの選択の幅を持たせて欲しい。(僕もその内の一人。現実、僕が市からお借りしている築35年プレキャストコンクリート造の市営住宅は灼熱、極寒である。)

・・・話がそれましたが・・・・

設備のための住宅ではなくて、住まいは人間のための器だ!!

住宅、設計ということ。

当たり前ですが、形態だけじゃない。(勿論、形態も僕にとって重要ですが)人間と人間で住の器を作っていく。

例えば、僕は夏目漱石の人間の暗い部分を描写した作品郡 (こころ それから等) が好きです。
でも、現代の人気作家 井坂幸太郎のさわやかなヒューマンドラマも好きです。

どっちもあってこその人間だ。

華やかさもあり、人間の土着的な部分にも目を向ける。

この気持ちを持って責任ある仕事をして行こう。と強く思いました。

この本に出会えて良かった。宮脇先生が病床で闘病されながら、この本の執筆に当たっているという前書きを読んでトリハダがビリビリでした。

ありがとうございました。