2014.3.19

素材感

 
現在、ご依頼いただいているいくつかのプロジェクトで、改めて素材感、というものについて考えています。
 
建築にとって素材は重要であり、また、切っても切り離せないもの。
 
しかし、素材とは、鉄ひとつとっても、黒皮の付いた鉄、錆た鉄、塗料で艶を出した鉄、亜鉛メッキ処理をした鉄、等と一括りにはできません。
 
 
今の思考をしっくり表す言葉は、素材ではなく、素材感。
 
 
素材、ではなく、素材感という概念で素材を考える。
 
 
その言葉が持つ雰囲気の中には時間的な要素や、人の情緒にうったえる感覚も内包するように思います。
 
 
造形家の大壺を中心に置く住居プロジェクトでは、その造形家が生むこの世界に唯一の質感、しかし人の胸の奥の情緒にうったえるようなどこか懐かしい素材感が持つ魅力の理由に、
 
錆びた鉄を飾りではなく、建築的な衣として纏い、風景に佇ませることを重要なコンセプトとしたプロジェクトでは鉄の錆が持つ魅力について考えを深めています。
 
 
素材感について考える機会が多くなったのは、以前に増して陶器について興味を持ち始めたからだと思います。
 
 
少し前に、地元三重県津市にある石水博物館に行ってきました。
 
 
ここは元百五銀行当主にして、陶芸家としても多大な功績を納められた
 
川喜田 半泥子の作品が並ぶ美術館です。
 
 
半泥子(はんでいし)
 
 
この名は禅の師からの命名であり
 
 
「半(なか)ば泥(なま)ずみて、半ば泥まず」
 
という意味との事。
 
 
凄く繊細であり、人間らしさも併せ持つ名前ですね。
 
 
本業は実業家でありながら、東の魯山人 西の半泥子、 昭和の光悦とまで言われた陶芸家です。
 
 
この美術館に訪れたことも、素材感について考える大きな切っ掛けとなりました。
 
 
様々な表情を持つ陶器の素材が放つ魅力はもちろん、その作品につけられた銘(陶器の名前)の豊かなこと。
 
言葉のセンスにもまた感銘を受けました。
 
 
特に心を奪われた作品をご紹介します。
 
 
 
 
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『雨後夕陽』
 
 
 
 
 
 
イメージ 2
 
『雪の曙』
 
 
 
素材感とその雰囲気にふさわしい銘が持つ言葉の力が作品をより魅力的にしています。
 
 
 
 
 
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こちらの銘はなんと、『欲袋』
 
実業家らしいネーム。
 
このフォルムと、切れ目から垣間見える金色の青海波。まさに銘がこの作品をあらわしています。
 
 
日本は食事の際に陶器を手に持ち、また直接それを唇につける文化の国です。
 
 
人の 触覚的な手触りにも、内面に潜む情緒的な手触り、どちらにも呼びかける 素材感 というものが持つ魅力。
 
 
素材感、今の自分のテーマであり、おそらく今後追及し続けるであろう事象です。
 
 
 
 
今回のプロジェクト達を通じて開きはじめた自分の中の感覚。
 
 
鉄、陶器の素材感から大きな気付きを頂いています。
 
 
 
 
 
最近、近くにいる器たち。
 
 
配置によっても、まとまりとしての素材感の変化がおこりますね。
 
 
 
 
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                    米田雅樹 三重県 建築設計事務所