2023.10.27
舟に浮かんで ゆらゆらと
ここ何年かは、お正月に香川県へ行っています。
高松市に建つ「高松城披雲閣」という藩主の御殿は、三が日のみの公開となるため、それに目掛けて旅行をします。
大書院は天井裏をトラス構造とすることで、4間(7280mm)もの梁を柱無しで飛ばしている空間です。
もう一つ立ち寄るのは、栗林公園掬月邸。
栗林公園も藩が造った庭園で、ゆったりとしたひと時を過ごせるため、デートスポットとして、もってこいの場所です。
掬月邸は、池に張り出すように建っています。
お茶をいただいて奥へ進むと、障子が開けられた座敷にたどり着きます。
座敷に座って池を眺めると、縁側の床と障子戸によって切り取られた水面と向こうの島が伺えます。
水面がゆらゆらと揺らいでいるので、建物とでもいう舟に乗って、穏やかな湖にでも出ているような気分になるのです。
前回のブログでは、柱の意味について少し触れました。
この掬月邸も柱に着目すると面白いのです。
柱の断面形状は、大別すると3種類あります。
一般的な柱は、角柱と呼ばれるもの。ピンとした角があり、カクカクしています。
次に見るのは、丸柱。これは円形で、古いお寺などで使われていることが多いですよね。
そして、もう一つ、面皮柱。角は木の丸いままを残し、4面に木目を出した柱を言います。
掬月邸はこの3種類を意図的に使い分けているのです。
角柱は、座敷の中央、部屋を二分するところに使われています。これは上座と下座を明確にする意図のように感じられます。
丸柱は、縁側に使われています。円形であることで、建物内から外の世界へスムーズにつながっていけるような感覚です。
面皮柱は、座敷と縁側との境界。障子戸が付くところに使われています。柱の角が丸いので、「人のいる場所から外の世界へのつながり」と、「障子戸の戸当り」という意匠性と機能性の良いとこ取りをした柱として、読み取ることができます。
更に、柱の断面寸法も違います。
角柱は105mm程度。面皮柱も同寸法ですが、角が丸くなっているため角柱よりも小さく見えます。
そして、丸柱は直径90mm程度。
人のいる場所から外の世界に向かうにつれて、細く見えるように意図的に配置していることが分かります。
このような微細な寸法調整も、洗練された空間をデザインするのには必要なのだと、私は思うんです。
今年は、改修工事が完了した「旧金毘羅大芝居 金丸座」にも行ってきました。
舞台下の奈落の空間や、裏方(控室)の仕掛けもけっこう面白いと思います。
まだお正月旅行を計画中の方は、ぜひ香川県へ足を運んでみてください。
スタッフ 阿部