用途:住居
構造:木造
竣工:2024
『既存領域をえぐる』
玄関を開けると、一直線の軸線が通る.
廊下、トンネル.
建築の躯体がとなりの森への視線をくり抜く.
築50年~60年の木造平屋建ての住居をリノベーション.
リノベーションの場合、柱、壁を除去、または付け足し、空間を設える手法が一般的である.
壁による間取りの再プランニングといえる.
ここでは、柱・壁の除去による水平方向の構成変更に加え、
天井面をえぐり、床面をえぐり、屋根裏と床下に隠れていた気積に形を与え、空間を再構成した.
リノベーション前の間取りに対して壁の追加による更新は行っていない.
壁の除去による水平方向の再編集は視線の抜けと気配のつながりを更新し、上下方向の体積の掘削は、その場の居心地を担う新たな体感を生みだす.
加えて、棚下1.82mの棚を空間に挿入し、正対する部屋同士で植物やコレクションを愛でることができる仕掛けを施した.
銅板で拡幅した赤い光.
棚の下部は低い天井となり、そこに丸く穿った孔から光が落ちる.
棚横からは水平方向を照らす2WAYの光源となる.
水回りは既に以前改修が行われていたため、壊すことなく隣接する素材とのバランスを検討し、そのまま利用した.
こうして生まれた室内に全開閉式の壁面建具を挿入し、アーティストである住人の作業スペースや寝床、思春期のお子さんのスペースに調整可能な可変性をつくった.
もともと天井裏であった部屋上は銀色に塗装され、抽象的に鈍く光り、時間と無意識をつなぐ.
かつて土であった床面は見えない空気の層がコンクリートに浸され、隣接する部屋同士に時間と意識の奥行を与えている.
photo:Shogo Yamazaki
設計:ヨネダ設計舎
施工:大勇建築