でくさんち

用途:住居+硝子 店
構造:木造
竣工:2020

伊勢湾に囲まれた岬の先端に建つ住居兼工房。
計画地はハザードマップで津波が予想される地域に指定されており、はじめての打合せの際に確認すると、「自分はこの場所で生まれ育ち、生業の修行も沖縄の海と共にあった。有事の際はそこの避難タワーに逃げます。自分たち家族は海と住みたいんです」と返答があり、強い決意と希望、故郷への愛を感じ、設計を始めた。
建主は再生ガラスによる吹きガラス作家であり、かつて祖父が使っていた海苔小屋を再利用し、窯を構えている。本計画では海苔小屋の一部を解体し、既存小屋が担う機能と合わせて職住一体となる生活の場を設計した。計画地の周囲は海だけでなく伊勢の山々の稜線、河口など全方位に魅力的な景色が広がる。景観の恵みがある一方、海からの飛砂は無視できないものがあり、居室を2階以上にもち上げ、吹きガラスの息吹のように玄関口から建物内へ海風を導きつつ、居室への砂をカットした。海辺の台風の脅威に対して、開口部はアルミサッシの性能を頼り、併せて雨戸サッシをフル活用して、ぐるりとカバーし、環境に対して閉じると開くを両立した。
プラン中央に配した階段は玄関から始まり、3階の広間に到達した際、視界の先に広がる海を最初に迎える動線計画とした。45度振った階段室と縦動線を各室とダイレクトに連関させることで、同一の形状でありながらそれぞれの場で異なる体感が生まれた。岬の先、海辺の小屋たちが風景をつくる地域の中、建主の作品による灯りが漏れる灯台のような佇まいとなることを願った。


photo hiroshi tanigawa

新建築住宅特集2020年12月号

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