用途:宿
構造:木造
竣工:2020
三重県は鈴鹿山脈の東山麓の西部に位置する御在所岳の麓、三滝川のほとりに一棟貸しタイプの villa12 棟、管理棟、3 棟 の飲食棟を計画した。
施設のコンセプトは『刻の経過と共に美しく育つ素材』を活かし、計画すること。
12 棟の宿泊棟は全て異なるプランであり、それぞれ「石」「土」「鉄」「木」「紙」「硝子」「漆喰」「漆」の8種のさまざまな素材をテーマに構成されている。 「土」の棟は土の特徴を最大限に活かし、「石」の棟は石が持つ重量感、質感を視覚的、体感的に感じる事が出来るよう、選定したそれぞれの素材に相応しい建築形態となるよう、設計していった。 計画地は花崗岩から成る「菰野石」という白く、力強さと上品さを兼ね備えた石が産出される地域であり、「石」の棟はこの土地で形成されたこの菰野石の力を借り、アプローチや客室に石という素材にしか出せない空気感を吹き込んだ。 そんな建築の形態とそれぞれの素材により唯一無二の場所が生まれる。 そこに本計画のプロデューサーである内田鋼一氏が目利きし、選んだ世界各地のアンティークやデザイン性の高い家具や照明などの調度品、現代美術や彫刻などのアート作品が配され、宿泊体験をさらに特別なものにする。 すべての客室には天然の源泉掛け流しの温泉がついており、川のせせらぎを聴き、山々の稜線に広がる夕焼けを眺めながら入浴を楽しむことができる。 建築を雁行型に配置・計画し、全ての部屋の開口を山側へ開き、隣接する客室からは見返し のない開口計画とすることで、自然の眺望と十分なプライベート感を両立した。 温泉の浴槽は左官職人によりそれぞれの棟のテーマにちなんだ素材で仕上げられている。 また、土の棟には武者小路千家千宗屋氏監修の茶座敷『抱土』を擁し、それぞれの客室にはブック ディレクター幅允孝氏が各棟のテーマに合わせて選書した書籍が納められる。 また、顔認証式チェックインシステムを導入しており、非接触型で宿泊滞在が可能なプライベートvilla である。
collaboration:内田 鋼一
Photo:ToLoLo studio Hiroshi Tanigawa
商店建築 2021年12月号
コンフォルト 2021年October No181